京都大学リスク研究ネットワーク,Kyoto University Risk Research Network,KURRN

京都大学リスク研究ネットワークの設立趣意


 近年、リスクという言葉は様々な分野で使用され、リスク解析やリスクコミュニケーションの確立を目指した様々な研究が行われています。 例えばリスクの定量的評価方法やリスクコミュニケーション手法を考えた場合、それらには既存の分野を越えた普遍的な理論や手法が存在すると思われますが、 現状では研究分野を越えた研究連携は十分に行われておらず、このため統一されたリスク学としての発展、熟成の機会を失っているのかもしれません。 このため私達は2014年11月に日本リスク研究学会第27回年次大会が京都大学で開催されることを契機として、 京都大学の各分野において実施されている様々なリスク研究をサーベイし、京都大学としてのリスク研究を組織化して国際的に発信する体制を確立しようと考えました。 これによって、統一されたリスク学の発展を加速し、世界中のリスク解析研究組織との連携を強化するとともに、アジア地域でのリスクマネジメントのための人材育成、先進国との密な連携による国際共同研究の推進、 そして、福島第一原発事故などで避難した人々の帰還促進に貢献することを目指そうと考えました。

   私たちは緩い連携による「京都大学リスク研究ネットワーク」と呼ぶリスク研究に関する全学規模の組織を構築し、以下の事業を実施することを提案します。
1)学内ネットワーク上にメーリングリストおよび情報交換のためのウェブサイトを作成し、関連研究者らに参加を促し、活発な情報交換、共同研究加速化のためのプラットフォームを構築します。そして、京都大学におけるリスク研究の全体像を系統的に明らかにすることを目指します。
2)京都大学リスク研究ネットワークとしての英文ホームページを充実させ、この分野での研究連携を求める国内外の研究者、および教育機会を求める留学希望者へ大学として一元的に情報発信を行い、各学外研究者、留学希望者と学内研究者との間でマッチングを行うためのプラットフォームを提供します。
3)ハーバード大学リスク解析センターなど、国際的な研究組織・機関と、全学規模での交流、共同研究を行うための受け皿となるヴァーチャルな組織を構成し、国際的な研究連携、人材交流に寄与します。
4)放射線リスク管理に関する京都大学の研究者としての見解を京都大学リスク研究ネットワークから発信することで、住民や幅広い市民の認識や判断の材料となる科学情報の提供に貢献し、福島の復興および福島における除染目標の設定と帰還促進に寄与します。

   以上のような活動を京都大学の各部局、各研究室、各研究者らが自発的に参加することで実施し、リスク管理教育研究拠点としての国際的地位確立を目指す、「京都大学リスク研究ネットワーク」を構築することを私たちは提案します。 京都大学のリスク関連研究者らの多くの参加を期待しています。

2014年11月
京都大学リスク研究ネットワーク構築発起人
工学研究科 米田 稔
農学研究科 新山陽子